笑激の告白【文福部屋】

三枝兄「六代文枝」襲名決定 ! !

7月16日、五代目文枝一門の統領の三枝兄貴(公益社団法人上方落語協会会長)の68回目のバースデー。この日の昼、東京で兄弟弟子のきん枝兄、文珍兄をしたがえての「六代文枝襲名」の記者会見を行った。誰もが認める全国スター「三枝」として45年間愛着もあったことでありましょう。しかし江戸幕末から伝わる「桂文枝」の大名跡を継ぐことがまさに「使命」と考え大きな決断となった。米朝ご一門、春団治ご一門も皆ルーツをたどれば「桂文枝」にたどり着く、いわば桂派の宗家である。我が師五代目文枝も永らく「小文枝」として親しまれたが、やはり歴史をつないだ今回のことで改めて「五代目」がクローズアップされたことは喜ばしい。この脈々と続く系図を見て私も、また私の弟子(文福一門)たちも改めて誇りを持ち責任と自覚を持ちたいものだ。なお上方では「六代目」と言えば言わずと知れた笑福亭松鶴師匠の事を指す。そこで三枝は「六代文枝」で通すと言う。
さて記者会見を終えた後すぐ大阪にもどり京橋花月での「桂三枝の笑宇宙」という大イベントを行った。密着取材ということで多くのマスコミ報道陣が同行、来年の「吉本興業創立100年」の記念事業の目玉の一つでもある襲名なので、よしもと関係者も多数終結。三枝一門の門弟たちもスーツにネクタイの正装でズラリ。私めも京橋花月のこの落語会に出番を頂いた。五代目文枝一門の直系の兄弟弟子でこのシリーズの会に出番をもらえたのは私だけだ。それはなぜか? 200を超える(今も増えている)三枝創作落語の中の最新作に「親父の演歌」いう噺がありなんとそこに私、文福が司会者として登場するのだ。一席のオチがついた後、舞台は暗転になりピンスポットがあたり私が司会者として登場。「本日は嵐龍太郎歌謡リサイタルにようこそ…」(途中甚句や音頭なぞかけ等でつないで)
イントロが流れると、赤い灯、青い灯、道頓堀に恋の花咲く夜が来る。嵐龍太郎の熱唱、浪花恋サブレ ! ! はりきってどうぞー。すると三枝師が派手な着流し姿で登場し、この歌を二番まで途中セリフ入りで歌う。お客様は大盛り上がり。唄い終わって「司会は文福さんでしたー」とよび込んでもらって2人並んでチョンチョンとどん帳が下がる。初演のとき繁昌亭で演らせてもらってわりと上手くいったので、このご縁で今回の大舞台となったのだ。ましてDVDに収めるという、絶対失敗は許されない。リハーサルのときからドキドキ。前出の多数のマスコミ陣、よしもと関係者、こんなムードが一番苦手な私はこの後の私の本来の落語の事なんてどうでもええぐらいの緊張感。
さあ開演。生のお囃子で「ハッピーバースデーツーユー」の曲に乗りスーツ姿の三枝師が登場。大入満員のお客さんは誕生日と襲名の二重のお祝いに祝福の大拍手。そして三語君の「桃太郎」、続いて私の新作「民謡温泉」。これはいつものネタなのでかなりの爆笑だったと思う。オチ前の「ドンパン節」のとき「まだ終わらんのか ! !」と三枝師が乱入。これでドーンと盛り上がり「これ以上やったらドンパン節のふるさとで皆さんもアキタ アキタとなるでしょう」とサゲられた。三枝師の「合格祈願」で仲入の後、三歩君司会でハイヒールのご両人をゲストに迎えて三枝師とのトークコーナー。そして三風君の古典「青菜」のあと、いよいよ「親父の演歌」私は楽屋や舞台ソデで司会の部分のくり返し、どもらんようにかまんようにスラスラと…。三枝師の着替えの時間にうまく寸法あわさなあかん、イントロでうまくリズムにのらなあかん…。ドキドキハラハラ。「親父の演歌」の泣き笑いの一席、お客様は大満足、そこにこの演出。先ほど一席演じていたこともあり、私が司会で登場すると驚きと笑いで迎えられた。自分でもなんだかバッチリきめたつもりだ。仲間の芸人さんや「よしもと落語プロジェクト」の皆さんにもほめて頂いた。
三枝師が気持ち良さそうに唄っているところを、そでからデジカメで撮りまくった。フィナーレで私が迎えられ改めて三枝師が「これからは六代文枝にむかって命をかけてがんばります」と力強くごあいさつ。私はすかさず「我々の師匠五代目文枝」とかけまして「名大関小錦関ととく」その心は「いつまでもオモイデ~」。さらに「六代文枝」とかけまして「風船ととく」その心は私より先に三枝さんが「キタイがふくらむ」やろー。私がドテーンとこけたら場内大爆笑 ! !でどん帳が下りた。私も涙が出そうになって楽屋に戻ったらギャペー ! ! ズボンの後ろポケットにデジカメを入れていて、あおむけにずっこけた時にグシャー。トホホー。
その後打ち上げでバースデーケーキが出たり、飛び入りで上方落語協会の副会長鶴瓶さんが来られたりしたのにデジカメが…。それでも私は気を取り直しお祝いの河内音頭を唄った。そしてダメモトでデジカメで打ち上げの模様を撮ったら中のチップは大丈夫でちゃんと撮れていた。私もデジカメも根性や ! ! もちろん次の日に一番安いデジカメを買いに行ったけど…。トホホー。