一世一代の芸

2009年、(社)上方落語協会の忘年会が繁昌亭近くのホテルで行われ、桂三枝会長あいさつや新入会員紹介等なごやかに進み、宴もまつなわ、うめなわ、いやたけなわ… 司会の月亭八方理事が、「そろそろ文福さん、余興を…」えーっ私、もう38年も身内の前で芸をしてまんねんで、トホホー。誰か代わってやってくれる後輩、若手が出てほしい… 例のごとく、弟分の坊枝君とのかけあいで、なぞかけから入り(何でやねん ! ! )いつもは河内音頭や、相撲甚句やが(これまた何でやねん ! ! )ちょっとちがう所を見せようと今回はドンパン節 ! ! しかも、出席者の噺家の名前をおりこんで、即興で…。これが大受け ! !
やがて中じめ。一門の小枝君らと二次会にと思っていたら、三枝会長と桂春之輔幹事長が「おい、文福君ちょっと行こか ! ! 」「はぁ〜、どこへでっか?」「まぁええがな…」三枝会長の車に乗ると桂団朝君もおり「今から武庫之荘へ…」「えーっ、それって米朝師匠のお宅でっしゃろ ! ! 」「いやー、今夜の君のドンパン節おもろかったわ、ご高齢で協会の忘年会に来て頂けなかった米朝師匠に聞かせてあげたいんや」と三枝会長。お弟子の団朝君も「うちの師匠喜びまっせ、さっき電話しましたから」
閑静な尼崎の住宅街、米朝師匠のお宅へ着くと、ご子息のとおるさん(米団治君の兄弟)と米団治君のお弟子の米市君(内弟子修業中)が玄関で迎えて下さる。応接間に入るとジャーン! ! 人間国宝と奥さまがすわっておられ、カベには先月受章された文化勲章の額、そしてお祝いの花、花、花…。時刻は夜10時すぎ「夜分おじゃましてすんません」「いやー何のあいそもないんや、わるいなー」とおっしゃりながらおいしいお酒をすすめて下さる。
ひとしきり繁昌亭の事や相撲の話等していると、三枝会長「ほな、そろそろあれやろか、師匠の文化勲章のお祝いの歌や…」なんと私め、米朝師匠ご夫妻の前でドンパン節、河内音頭、相撲甚句、おまけになぞかけも、アホやがな〜。帰りぎわ、師匠がわざわざ玄関まで見送って下さり「あー今夜は楽しかった、おもろかったわー」と言って下さり、胸が一杯になりました。米朝師匠、今年御年85才になられる。いつまでも奥さまとご長寿で ! !