文福のおいやんストーリー

文福のおいやんストーリー
北陸粟津温泉の宿「法師」養老2年開湯というから1,300年の歴史をほこる日本最古の宿である。私はそこの47代目となぜか20年来の親友で、度々および頂く。
暮れの12月13日、恒例の年忘れの宴、永平寺で修行された名僧、岩田雅之師の法話の後、文福一座の腹話術師干田やすし君、そして私の落語、サービスに相撲甚句や河内音頭エトセトラ…。大入満員大爆笑、後は露天風呂で雪見酒、そして大宴会。しかし今回は、翌朝大阪市内の高校での芸能鑑賞会があったので、温泉と酒で時間をつないで酔うた勢いで、深夜3時31分発急行「きたぐに」に石川の小松駅から乗車、寝まきに着替え、寝台で熟睡すれぱ朝の6時42分に大阪だ。
目を覚ますとガビ〜ン、ホームに見える駅名は「福井」。んなあほな。なんと記録的な大雪で列車は立ち往生。雪に強い北陸線だが、豪雪の重さで木が倒れ、線路をふさいだわけだ。いつ動くか見当がつかない。「よっしゃ! ! タクシーや」駅前から少ないタクシーを必死でつかまえ「すんまへん、米原(滋賀)までたのんます、そっから新幹線や! !」ところが北陸道も通行止め、下の道も大渋滞。気温は下がるがメーター上がる。2時間半走ってやっと武生(たけふ)。「まだ福井や〜」車内でケイタイかけたおし、学校の方は、兄弟弟子の桂枝女太君に代演をたのみ、事情を知った主催者も了解してくれ、まず一安心。
武生駅前は足止め喰らった乗客であふれてる。駅前の小さな旅館の玄関口「あのーちょっとだけ休けいさせてもらえませんか。出来たらお風呂も…」「いや、うちは休けいはないんじゃ」「そこを何とか…」「そういわれましても…」「もうええわ! ! こんな所二度と来るかえ! !」
駅前交番の親切なおまわりさんが、スーパー銭湯を教えて下さり、まずはホッと一息。2時間程仮眠して駅へ行くと「本日中の列車は出ません」ヒェ〜。街のホテルも皆満室。武生駅前の小さな旅館。「あのー、今夜泊めてもらえますか?」「どっかで見たような…」「トホホー」事がわかり「それはそれは。今朝は失礼しました。ゆっくり休んで下さいや」やっぱりええ人や…。ストーブたいてくれたあたたかい部屋、ふとんにくるまって見たテレビニュース「雪の舞う中、徹夜の除雪作業」その姿を見ると文句は言えまい。ごくろうさん、おおきに。
翌朝駅へ行くと「まだ出ません」「ええかげんにせえ! ! 何しとるんじゃ! !」(ゆうべの感謝はどこ行った?)タクシー協会は遠出はダメというおふれ。途方にくれてると、駅に電車が ! ! お人形の「ひかるちゃん」の入ったトランクを引きずる干田君と共にあわてて乗ったら「富山行〜」タァ〜、このまま新潟へ出て上越新幹線で東京経由と考えてると、途中の芦原温泉あたりで大阪行がやっと来て何とか帰阪。
ゆきはよいよい帰りはこわい、びっしょりひや汗フクイけん! !


編 集 後 記
皆様お元気で新年を迎えられたでしょうか。いつも当新聞をご笑読頂きありがとうございます。我らの師匠五代目文枝は永遠に心の中に生きておりますので、これからも年4回(1、4、7、10月)と発行させてもらいます。
それにしても昨年は落語界も大変な年でした。うちのおやじの仲間が多く極楽寄席の巡業の旅に出られました。桂文紅師、林家染語楼師、講談の旭堂南陵師、そして桂吉朝師…。東京でも桂文朝師、三笑亭夢楽師、あらためて心からごめい福をお祈りします。(合掌) でも多くのファンの心の中にやはり生きておられることでしょう。
さて、今年は上方落語界にとりましては、記念の年です。今夏の開席にむけて念願の落語定席「天満天神繁昌亭」も昨年12月1日に無事「安全祈願祭」がとり行なわれ、順調に工事も進んでいます。
本年は犬年。「もう、あきた、イヌわ」なんていわれんように、ワンパターンにならず、各自オンリーワンの芸を一笑犬命つとめます。ご期待下さい。お体ご自愛下さいませ。
(桂文福)


「いちもん新聞より抜粋」